離婚はしていないものの、長年別居状態であるという場合、その別居期間を理由に離婚が認められるケースはあります。
期間を理由に離婚をする場合、目安となる別居期間というものがあります。
では、どの程度の期間別居を続けると離婚が成立しやすいのでしょうか。
今回は、別居期間と離婚の関係について解説していきます。
長期間の別居は離婚事由になり得る
民法第752条において「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」という義務があります。
そのため夫婦が婚姻関係を継続している状態であっても、特別な事情なく別居をした場合、民法で定められている同居義務違反になります。
長期間の別居は同居義務を果たしておらず、実質夫婦関係が破綻しているとみなされるため、離婚できる可能性があります。
目安の期間は5年以上
とはいえ、別居=即離婚というわけではありません。
まず重要になるのが別居の理由です。
以下の場合、基本的に夫婦関係が破綻しているとは認められません。
- 勤務地の異動による別居
- どちらかの親族の介護のための別居
上記のようなケースは、正当な理由がある別居ですので、何年続いても離婚事由とはなりません。
このような正当な理由のない別居の場合、長ければ長いほど離婚は認められやすくなります。
婚姻期間の長さにもよりますが目安としては、別居期間が5年以上となると、離婚が認められやすくなるといわれています。
ほかに離婚事由に該当する項目があれば5年以内でも可能
別居を理由に離婚するためには、5年以上別居をしなければいけないのかと聞かれると、そうとも限りません。
どちらか一方に、別居以外に明確に離婚事由に該当する理由があれば、短期間の別居期間でも離婚が認められるケースはあります。
- DVや家庭内におけるハラスメント行為
- 不倫などの不貞行為
- 生活費を入れない、働かないなど生活に協力的ではない
上記のように、別居以外に何かしら離婚事由に該当するものがあれば、別居期間と関係なく離婚が認められるケースがあります。
離婚裁判において離婚事由として認められる原因
夫婦の離婚には3つの段階があります。
- 協議離婚:夫婦間の当事者同士で離婚について決定する
- 調停離婚:協議離婚が成立しない場合、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行い、調停委員立会いのもとで決定する
- 裁判離婚:離婚調停で双方ともに納得ができない場合、最終的に裁判所による離婚裁判に発展し、裁判官によって離婚条件などの判決をもらう
協議離婚と調停離婚に関しては、当事者同士が合意すれば、どのような条件でも離婚はできますので、別居期間に関しても特に目安はなく離婚が可能です。
別居期間の長さが問題となるのは裁判離婚です。
裁判で離婚するためには、客観的に見て「夫婦関係が破綻している」と判断できるだけの理由が必要です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
長期間の別居は、上記のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたります。
「不貞な行為」「悪意の遺棄」などの明確な理由はなくとも、長期間の別居は、夫婦としての共同生活を営む意思がなく夫婦関係が破綻している状態とみなされる可能性が高くなります。
まとめ
離婚を決めるのは原則としては当人同士です。
当人同士の話し合いで離婚条件が決まるのであれば、別居期間の有無は関係ありません。
しかし、当人同士の話し合いで離婚が成立しない場合、第三者が見ても婚姻関係を継続するのが難しい、もしくはすでに婚姻関係が破綻していると判断できるだけの理由が必要になります。
もちろん別居というのもその理由になり得るわけですが、第三者が納得するだけの理由とする場合は、一定期間別居の状態が続いている必要があります。
その別居期間の目安は5年以上です。
ただし婚姻期間や夫婦の状況によって異なるので、離婚を検討している方は弁護士への相談を検討してみてください。